My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
こんなに大きな宮殿だ。時には盛大な宴が開かれることだって――。
「あっ」
思わず声が漏れていた。
「どうした?」
王子がこちらを見て、瞬間しまったと思う。
“宴”で先ほどプラーヌスと話したことを思い出したのだ。
「何か気付いたことがあったなら」
「いえ、あの……そういえばさっき、宰相のプラーヌスさんとちょっと話をして」
「プラーヌスと?」
薄暗い中でも王子が眉を顰めたのがはっきりとわかる。
でもやはり一応伝えておいたほうが良いだろうと私は続ける。
「はい。本来なら私たちも招いて王子帰還の宴を開きたいけど、王様がまだあんな状態だから申し訳ないと」
「……そうか。他には何か言っていたか?」
「えっと、あとは王様を救ってくれたことのお礼を言われて」
「ちょっと待て」
そこでいきなり超絶不機嫌な声が飛び込んできてギクリとする。
その声の主、ラグに視線を向けると案の定思いっきり睨んできていて。
「いつの話だ」
きっとプラーヌスと話したことを怒っているのだ。
私は顔が引きつるのを自覚しながら答える。
「だ、だからついさっき、ラグを呼びに行ったときに廊下でばったり会っちゃって」
「ばったり会っちゃって、じゃねーよ! やっぱりお前はなんにもわかってねぇじゃねーか!」
ソファから立ち上がってまで怒鳴ってきたラグに、怯みそうになりながらも負けじと言い返す。
「仕方ないでしょ! 話しかけられて無視するわけにいかないし、そんなことしたら余計に怪しまれて」
「そうじゃねぇ! だから一人で行動するなって言ってんだ。殺られてたかもしれねーんだぞ!」
その剣幕にびくりと肩が跳ねる。そのときだ。
「悪かった」
アルさんの声。
彼はラグの方を見上げ優しい口調で続けた。