My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
「お前が医師。そしてお前はその助手ということにすれば書庫にも案内しやすい。王の病を調べるためとでも言えばいいんだからな。ついでにクラヴィス、お前が言うようにそこそこ腕も立つということにしておけば後々側近にもしやすいかもしれない」
彼は呆気にとられているアルさんとラグを指さしながらスラスラと告げていき、最後もう一度クラヴィスさんを見上げた。
――パケム島を発ってからつい先ほどまでほとんど無口だった王子。ひょっとしてずっとこのことを一人で考えていたのだろうか。
クラヴィスさんはとうとう諦めたのか、重い溜息をつき頭を垂れた。しかし。
「ちょーっと待ってください。俺もこいつも医術の心得なんてこれっぽっちもないですよ。勿論そんな証持っていませんし、いくらなんでも無理がありますって」
「お前たち術士は傷を癒すことが出来るじゃないか」
焦るように言ったアルさんに、王子はあっけらかんと返す。
「や、あれはあくまで治癒の術でして、医術とは全く違うもんです。怪我ならともかく病のことなんてホントさっぱりですよ」
「僕が生まれるずっと前は、術士の多くが医師をしていたと聞いているぞ」
王子は強気の姿勢を崩さない。アルさんが完全に押されていた。
「そりゃ医術が広まる前の話で……っつーか、そもそもすでにいるんじゃないんですか、宮廷医師が。絶対すぐバレますって!」
「バレたらバレたでなんとかなる」
「なんとかって……」
「なんなら術士だと言ってしまったっていい」
「殿下! ですからそれは」
すかさず話に入るクラヴィスさん。だが王子はそんな己の従者を冷たく見上げた。