My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
――笛の音について。
諦めるようにラグが再び本を手にするのを見て、私は王子に訊く。
「そういえばその笛って、音の高さによって意味が違いますよね。変身するときの音の高さと、こっちに来て欲しいときの音は違うなって」
「あぁ、良くわかったな。塞ぐ穴によって音が変わるんだ。それによって意味も変わってくる」
やっぱりと少し嬉しくなる。
「いくつくらい音が出せるんですか?」
「8つだ」
「8つ! それじゃあ普通に曲も吹けますね」
8つといえば丁度1オクターブ分。
それだけあれば色んな曲が吹けそうだ。
「曲を?」
驚くように私を見る王子。
(あ、そっか)
ひょっとしたら笛で曲を――メロディを吹くという概念がないのかもしれない。
「はい。私の世界では笛は曲を演奏するためのもので、それとは形は違いますが学校で習ったりも」
「おい」
リコーダーを吹くマネをしているとラグの焦りを含んだ低い声に遮られハっとする。
そうだ。王子に私の正体がバレてしまっていたことはまだ誰にも話していないのだった。
(また怒られる!)
しかもなぜバレたのか、その理由は王子に内緒にしろと言われている。
「あ、えっと王子は」
「カノンのことはもう知っている。それよりもこっちに来て今の話をもっと詳しく聞かせてくれ」
私の弁解を遮り手招きする王子。
でもその後ろに立つラグは明らかに怒気を放っていて。
それに、今アルさんのそばを離れるのも不安だ。
「でも、」
「俺なら大丈夫だよ」
そうアルさんに言われ私はまだ躊躇しながらもソファを立った。