My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4

 私は、この世界にこうして楽譜が存在していたことに驚いていた。
 エルネストさんは楽譜を持っていると言っていたけれど、王子のように皆その存在を知らないようだったから。
 この書物はかなり古いもののようだ。

(ってことは、これが書かれた当時はもっとこの世界に音楽が溢れてたかもしれないってこと……?)

「それで、これはどう読んだらいいんだ?」

 王子の質問に私は我に返る。

「えっと、」

 ぱっと見てわかるのは12小節の短い曲だということ。
 音符は全て黒丸のみで、4分音符のような棒の付いたものはなかった。

(音の長さの指定はないってことかな)

 しかし音部記号は見たことのないもので、そしてやはり五線譜ではなく四線譜というのが不安だった。

「私の知る楽譜とは少し違うので確実ではないんですが」

 そう前置きしてから続ける。

「この黒い丸の位置は音の高さを表しているんだと思います。この曲だとここが一番低い音で、この丸が一番高い音……」

 私のたどたどしい説明を王子は真剣に聞いてくれている。

「それでこの曲はここで終わりになるんですが、」

 終止線と思われる2本の縦線の上で私は指を止める。
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