My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
「お前のおかげで、皆は僕が王を心配するあまり城を出たと思っているんだろう? 最後の最後に頼ったのが術士だったんだ、そう涙ながらに話せば皆納得してくれそうじゃないか」
そう、鼻で笑うように言う王子。
そんな彼を見て思う。――王子は、本当に王様……自分の父親のことを憎んでいるのだろうか。本当に、心配する気持ちはないのだろうか。
(なんか、それって少し寂しいな……)
離れ離れになったお母さんのことを想うからこそだったとしても、病に伏せっている王様のことを考えると少し可哀想に思えた。
部外者の私がそんなことを考えているなんて知る由もなく、王子は続ける。
「とにかく今は正面から宮殿内に入れればそれでいい」
「正面って、そこから中に入るんじゃなかったのか?」
クラヴィスさんに視線を移しアルさんはすぐそこに見えている小屋を指差した。
クラヴィスさんは疲れた様子で……というよりも、どこかふてくされた様子で答える。
「私はそのつもりだったのですが。殿下は最初からそのつもりなかったようですね」
「あぁ」
すぐに頷く王子。
「僕が帰ったときの皆の反応が見たいからな。特に、僕に暗殺者を差し向けた奴の反応がな」
そうして、また不穏な笑みを浮かべた。