My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
王子が笛の穴に指を当てていく。
「一番低い音は全部の穴を塞ぐんだ」
王子は突起部分を口に含み、ピーっと控えめに音を出してくれた。
確かにこれまで聞いた中でも一番低いように感じる。
絶対音感があるわけではないけれど、ドに近い音に思えた。
「そして一番高い音は全ての指を離したときの音」
もう一度、今度は全て離した状態の音を聞かせてくれた。
それは先ほどよりも丁度1オクターブ高い音だった。
「ありがとうございます。今の2つの音は同じ音ですね。私の世界ではオクターブって言い方をするんですが、この丸とこの丸が」
「それで? その曲を吹くと一体何が起こるってんだ」
不意に飛び込んできた不機嫌な声にぎくりとして顔を上げる。
先ほどまで私が座っていたソファに浅く腰かけラグがこちらを睨み見ていた。かなりイラついている様子だ。
すっかり夢中になって王子と話しこんでしまっていたけれど、彼からしたらこんな音階の話などどうでもよく、早く結論が知りたいのだろう。
でも確かに、一音一音に変身などの意味があるのなら、曲には一体どんな意味があるのだろうか。
「先ほどの曲は愛を伝えるものと書いてあった」
「愛を……?」
王子はもう一度先ほどのページを開き、続けた。
「おそらく、この書物が書かれた当時はこの曲を吹いて呪いを抑えていたんだ」