My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4

(本当に。そんなにあるのに)

 ――なのに、王子は今の今まで楽譜を、曲を吹くということを知らなかった。
 王様と呪いについて話したことがないと言っていた王子。だからかもしれないけれど。

「それまで探すとなると結構な手間になってくるぞ」
「ですよねぇ」

 そんな王子とアルさんのやり取りを聞きながら、私はもう一度楽譜を見つめ頭を整理していた。

 ――500年前に書かれた楽譜。
 その当時には吹かれていたと思われる曲。
 なのに、王子は知らなかった。
 王様も知らなかった可能性が高い。
 なら一体いつから――。

(いつから……?)

 そこまで考えて、気付く。

「歌と一緒だ」
「え?」

 その呟きはあまりに小さくてすぐ隣にいる王子にも聞こえなかったみたいだ。
 私は顔を上げ、もう一度王子に言った。

「歌と一緒なんです! 歌もいつからか不吉とされて、歌われなくなってしまったんです」

 先ほどから届きそうで届かなかった何かを、漸く掴めた気がした。

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