My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
しかし王子は全く動じる様子なく言い切った。
「僕は大丈夫だ。近いうちに必ずドナを王妃に迎えるからな」
その自信に改めて驚き、同時にふと思う。
(王様も、王子のお母さんを王妃に迎えるつもりだったのかな)
今朝街で出会ったあの美しい女性。
愛の証しにと彼女に笛を渡した王様。
でも彼女は王妃にはならなかった……。
ふぅと王子が短く息を吐いた。
「なんにしても、母さんにはこの曲を吹いてもらったほうが良さそうだな。母さんが来たら頼むぞ、カノン」
「え?」
「楽譜のことで頼れるのはお前だけなんだからな」
私は目を見開く。
そうだ。彼のお母さんはこれから初めて笛で曲を演奏することになる。
短い曲だけれどどうしたって練習は必要になるし、教える者も必要になる。
それが出来るのは今ここに私しかいないのだ。
私は緊張を覚えながらも、「はい!」 と大きく返事した。