My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
「あいつは弟派なのか?」
ラグの問いに机に戻ろうとしていた王子は足を止めた。
「あぁ、フィグラリースか」
王子は先ほど彼が立っていた扉の方に目をやる。
「だろうな。あいつはプラーヌスのお気に入りらしくてな、デュックスの従者にあいつを推したのも奴だという話だ」
(へぇ……)
ということは彼も要注意人物であるということだ。
「気に入ると言えば、随分とデュックスに好かれたものだな」
王子と目が合った。
「え?」
「デュックスはあれで人見知りなところがあるんだが、たった一日でよくあそこまで気に入られたものだ」
なんだか照れくさくて私は両手を振る。
「そ、それは、私がツェリウス王子が連れてきた医師――の助手だと思っているからですよ」
そう信じているからだ。
「先ほどの話。侍女ではなく王弟妃というのもありかもな」
「おーてい……?」
再び足を進めた彼を目で追いながらその耳慣れない言葉を小さく繰り返す。