My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
急いで向き直った私は視界に入ったまさかの光景に目を剥いた。
本棚が、ゆっくりと横に動いていく。
厳密に言うと、先ほど王子が笛を差し入れた棚から左側の棚が全て、半時計回りに移動していっている。――こんなの、驚くなという方が無理だ。
ぽかんと口を開けたままそれを目で追っていき、焦る。
唯一の出入口である扉が本棚によって徐々に塞がれていくではないか。
「え!? ちょ、い、入口が!」
そう指差しながら叫んでいるうちに完全に扉は塞がり、そこで本棚の移動は止まったようだった。
余りの出来事に思考がすぐには追いつかず、数秒置いてからやっとラグを見上げた。
「――どっ、ど、ど」
どうして?
どうするの?
どうなってるの?
口にしたい台詞が定まらないでいると、呆れたような彼の視線。
「前見ろ、前」
言われるままゆっくりと振り返って、危うく変な声を上げそうになった。
先ほどまで本棚があったそこに、セリーンが立っていたのだ。
「遅くなってすまなかった」
そう言った彼女の足元には、地下へと続く階段が伸びていた。