My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
20.再会
セリーンが無事だった。
その安堵よりまだ目の前で起こったことへの驚きの方が大きくて、彼女にすぐに言葉を掛けることが出来なかった。
まさか書庫塔にこんな仕掛けがあるなんて。
王家に伝わる唯一の笛を使い現れる隠し階段。しかも同時に入口の扉が開かなくなるのだから、有事の際にこれほど安心で安全な逃げ場所はないだろう。
(王子はこうやってお城を抜け出したんだ……)
「母さんは?」
その声は、はっきりと緊張していた。
そうだ、セリーンが戻ってきたということは王子のお母さんも一緒のはず。
なのにセリーンの他に誰も階段を上ってくる気配がない。
(もしかして、見つからなかったの……?)
「会えなかったのか?」
同じことを考えたのだろう、王子の声が微かに震えた。
しかしセリーンの答えは意外なものだった。
「母君はこの先の小屋で待っている」
「え?」
「すまない、何度も説得したのだが、私ではあの小屋までが限界だった」
(限界?)
どういうことだろう。
王様の元へ行き、笛を吹いてもらわないとならないのに……。
王子がセリーンに詰め寄る。
「小屋にいるんだな、母さんが!」
てっきりどういうことなのか訳を訊くのかと思ったけれど、今の彼はそれどころではないようだ。