My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4

 セリーンがしっかりと頷くと、王子は興奮を抑えるように一度大きく息を吸い頭を下げた。

「ありがとう……!」

 その声はやはり少し震えていた。
 セリーンはそんな彼に優しく微笑みかける。

「早く行くといい。子供から説得されればあの頑なな心も動くかもしれない」

(頑なな心?)

 やはり気になる言い方だ。でも、

「あぁ!」

王子はそう力強く返事をするとラグから手燭を受け取りすぐさま地下への階段を駆け下りていってしまった。余程早くお母さんに会いたいのだろう。

 と、背後からは大きな溜息。

「ったく、面倒くせぇな」

 低く愚痴りながらもラグは私の横をすり抜け王子の後を追った。
 私はセリーンに駆け寄る。

「セリーン、ありがとう! なんか、大変だったみたいだね」
「あぁ、すぐに会えたのだが、説得に時間がかかってしまってな。……あれはかなりの頑固者だぞ」

 最後の一言は声を潜めたセリーン。

「そうだったんだ……」

 街で少し話しただけだけれど、確かに気は強そうではあった。

(王子も結構頑固者だもんね)
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