My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
入口が見えなくなると途端に視界は闇に覆われた。
人一人通るのがやっとの狭いその階段を、両側の壁に手を着きながら慎重に下りていく。
どうやらここも上と同じく螺旋階段になっているようだ。
(元は見張り塔だったって言ってたけど、ここもその頃からあったのかな)
そんなことを考えていると、暗闇の先に仄かな光を見た。
その光を求め足を速める。
すると間もなくして柔らかな灯りの中に王子とラグの姿を見つけた。
「お待たせしました」
階段を下りきったそこは何もない2畳ほどの空間だった。
てっきり小屋へと続く長い通路があるのかと思ったが、ここにも何か仕掛けがあるのだろうか。
と、王子が私の背後を見上げた。
「彼女は?」
「あ、セリーンにはアルさんを見ていて欲しいってお願いしたんです」
「そうか、そうだな。では閉めるぞ」
「はい」
王子はくるりとこちらに背を向けた。
(あっ)
灯りに照らされた壁を見て気づく。王子の丁度腰辺りの位置に見覚えのある形の窪みがあった。
思った通り、王子はその窪みに笛を押し込み、先ほど本棚にしたようにがちゃりと回転させた。
すると少しして頭上からゴゴゴ……と重いものが動く音が聞こえてきた。本棚が元の位置に戻っているのだろう。
その様子が見えるわけではないけれど、つい天井を見上げてしまう。