My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4

「なんだ。さっきは来てくれるに決まっていると言っていたじゃないか」
「そ、そうですけど」

 確かにそう言ったことを思い出し言葉に詰まる。
 むしろ先ほど来てくれるだろうかと不安がっていたのは王子の方だったのに。

「大丈夫。僕が説得してみせる。だから急ごう」
「はい」

 と、返事をした時だ。

「お前はもう大丈夫なのか」
「え?」

 その声に振り向くとラグの青い瞳とぶつかった。

 ――カノンはもう平気なのか?
 つい先ほどのセリーンとの会話が蘇る。

(大丈夫って……?)

 ラグは眉を寄せ続けた。

「笛の吹き方を教えるんだろう」

 あぁ、そのことかとほっとしながら頷く。

「うん、まだ完璧ってわけじゃないけど、楽譜見ながらならなんとかなると……って、あー!」

 思わず通路に大反響する声を出してしまっていた。

「どうした?」

 王子がびっくりした顔でこちらを振り返る。
 私はさーっと顔が蒼くなるのを感じながら、小さな声で言った。

「わ、私、楽譜の載った例の本、忘れてきちゃいました」

 ここまで来てそのことに気づくなんて、抜けているにも程がある。
 あれがないと王子のお母さんに笛を教えることが――。

「ここにある」
「え」

 その低い声に再び振り向くと眼前に本が差し出され驚く。
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