My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4

 同時に呆れたような溜息が降ってきて。

「ったく、しっかりしろ」

 いつもの不機嫌そうな顔を見上げて、私は彼の手からその本を受け取った。

「ありがとう」

 お礼を言うと、彼はふんと鼻を鳴らし視線を逸らした。
 後ろで王子がふぅと息を吐く。

「行くぞ」
「は、はい」

 私はしっかりと本を胸に抱きしめ、再び王子の背中を追いかけた。



 ――やっぱりまだ少し気まずいけれど、いつもと変わらない彼との会話に私は安堵していた。

 そうだ。彼はいつもぶっきらぼうで、怒りっぽくて、でも頼りになって……。とにかくそういう人なのだ。
 嫌われているかもしれないなんて、考えるのはやめにしよう。
 そうすればきっと、今まで通りに接することが出来る。

(……出来るはず、だよね?)

< 197 / 330 >

この作品をシェア

pagetop