My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
同時に呆れたような溜息が降ってきて。
「ったく、しっかりしろ」
いつもの不機嫌そうな顔を見上げて、私は彼の手からその本を受け取った。
「ありがとう」
お礼を言うと、彼はふんと鼻を鳴らし視線を逸らした。
後ろで王子がふぅと息を吐く。
「行くぞ」
「は、はい」
私はしっかりと本を胸に抱きしめ、再び王子の背中を追いかけた。
――やっぱりまだ少し気まずいけれど、いつもと変わらない彼との会話に私は安堵していた。
そうだ。彼はいつもぶっきらぼうで、怒りっぽくて、でも頼りになって……。とにかくそういう人なのだ。
嫌われているかもしれないなんて、考えるのはやめにしよう。
そうすればきっと、今まで通りに接することが出来る。
(……出来るはず、だよね?)