My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
「あ、カノンちゃんのが先だったか」
その声に振り返るとアルさんの笑顔があった。
「おっはよ! 良く眠れたみたいだな」
彼も2日間寝ていないはずだが、その顔には全く疲れが見えなかった。
「おはようございます。あの、先って……」
私は訊きながら、少し体を傾けアルさんの向こうを見る。
誰か私の他にも寝ている人がいるということだろうか。夜行性のブゥがラグのポケットの中でお休み中なのはわかるけれど……。
背中が見えたのはクラヴィスさんと、ラグの二人。
「あれ、ツェリウス王子は?」
二人の間にいるはずの王子の姿がない。
するとアルさんは意味ありげに笑って、前に向き直った。
「おーい、クラヴィス」
「はい?」
アルさんが少し抑えた声で呼ぶと、クラヴィスさんはゆっくりと首を回しこちらに爽やかな笑顔を向けた。
「王子様はまだ寝てんのか?」
「えぇ、ぐっすり休まれていますよ。余程私の懐が寝心地良いみたいです」
そのとっても嬉しそうな表情に思わず吹き出しそうになってしまった。
アルさんがそんな私に「なっ面白いだろ?」 というような視線をくれた。
あんなに嫌っている人物の胸でぐっすり寝ているなんて、本人は気づいているのだろうか。
ここからではその寝顔は見えないけれど、なんだか微笑ましかった。
(起きたらすぐにクラヴィスさんに文句言いそうだけど)
「ところでカノン、“キョウちゃん”とは誰だ?」
「え!?」
いきなり後ろからかかったその質問に、どきりと胸が音を立てた。