My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
王子が口ごもる。その頬が赤らんで見えたのは気のせいじゃないだろう。
するとお母さんはそれまでの悲しそうな笑みではなく、嬉しそうに、とても幸せそうに微笑んだ。
「そうか、そうか!」
繰り返し頷くと強く強く我が子を抱きしめた。
「母さん?」
「大丈夫だ。私は、こうして成長したお前に会えた、それだけでもう十分だよ」
ゆっくりと抱きしめていた身体を離し、息子の瞳を覗き込むようにして見つめるお母さん。
「これだけは覚えておいで。お前はあの頃、私とあの人が真剣に愛し合って出来た子だ。逃げたことはもう数えきれないほどに後悔したが、お前を産んだことは一度だって後悔したことはない」
そうして、お母さんはとても綺麗に笑う。
「ツェリウス。お前は私にとって掛け替えのない、自慢の息子だからね」
「……っ!」
王子は堪らなくなったのか、もう一度自分からお母さんに抱きついた。
その肩が小刻みに震えているのを見て、こちらも涙腺が緩む。
そして、ふと考えてしまった。
(お母さん、どうしてるかな……)
目の前の親子と自分とをつい重ねてしまった。
――あ、マズイ。
そう思って一度ぎゅっと強く目を瞑る。
今はそんな場合じゃない。