My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
そして再び地下通路のスタート地点に戻ってきた私たち。
このまま螺旋階段を上がれば書庫塔に出られる。しかし。
「おかしい」
王子がそう呟いたのは本棚を動かすための装置に笛を差し入れたときだった。
その訝しげな声音に不安を感じて私は訊く。
「どうしたんですか?」
「……動かない」
そう言ってもう一度笛を回そうと腕に力を入れる王子。
「動かないって、」
「出られないってことか」
ラグの冷静な声を聞いて焦る。
「なんで!?」
すると王子は天井を見上げ言った。
「書庫塔の扉が開いていると、動かないようにはなっているんだが」
確かに扉が開いているときに本棚が動いてしまっては大変だけれど。
「で、でも、クラヴィスさんが扉の外で見張ってくれてるはずですよね?」
「そのはずなんだが……」
自分で言いながら嫌な予感がした。まさか。
「閉じ込められたんじゃないか?」
その溜息交じりの声に王子はラグを見る。
「閉じ込められた?」
「……あいつが、クラヴィスが実は弟派だって噂があんだろ?」
王子の目が大きく見開かれる。
「クラヴィス、が?」
やはり、王子は知らなかったのだ。
私は流石にショックを受けた様子の彼を気にしつつ訊く。
「でもなんのために」
「さぁな。帰ってきてほしくない理由があるんだろう」
ラグは言いながら壁に背を預けた。