My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4

 王子も、回廊を見渡しながら眉を顰めている。

 渋々でもいつも王子の言いつけを守っていたクラヴィスさん。
 一体、どこに行ってしまったのだろう。これでは疑惑が深まってしまう。

 と、王子が何も言わず駆け足で回廊を進み始めた。
 それを慌てて追いかけながら言う。

「あの、王子。さっきのは本当に単なる噂で」
「なら何でいない」
「や、それは、わからないですが……」
「――違う」
「え?」
「あいつが、僕の命令を破るほどの事態が起きたかもしれないってことだ」

 どきりと胸が嫌な音を立てる。

「それって」
「とにかく急ぐぞ」

 クラヴィスさんが王子の言いつけを破るほどの事態。
 そんなの限られてくる。

(まさか、間に合わなかった……?)

 思わず後ろを振り返れば、目の合ったラグもその顔に焦りの色を濃くにじませていた。
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