My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
まず向かったのは王様の部屋よりも近い、王子の部屋。
階段を上がり長い廊下に出るが、そこにもクラヴィスさんの姿は無い。
王子が無言で部屋を開けると、すぐにセリーンの赤い髪が目に入った。
「カノン」
「ぶぅ!」
セリーンがソファから立ち上がり、一緒にブゥも飛び上り嬉しそうに鳴いた。そして。
「皆、戻ってきたのか」
聞こえたその声とゆっくりと上半身を起き上がらせたアルさんの姿を見て、どっと安堵感が押し寄せる。
(良かったぁ……)
思わずへなへなとその場に座り込んでしまった。
「カノンちゃん?」
「どうしたんだ、一体」
「クラヴィスは来なかったか」
セリーンの言葉を遮るように、王子が訊く。
眉を寄せる彼女。
「一緒じゃないのか?」
それを聞くと王子はすぐに踵を返し廊下に出た。
王様の部屋に向かったのだろう彼の後をラグがついて行く。
慌てて立ち上がりながら、私はセリーン達に小声で言う。
「クラヴィスさんがいなくて、何かあったのかと思って。次、王様のとこ行ってくるね」
「母君は」
セリーンの短い問いに、私は首を振り笑顔で答える。
「王妃様にね、お願いすることになったの」
「……そうか」
セリーンとアルさんが同じように微笑み頷くのを見て、私もその部屋を出た。