My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
3.オレンジ屋根の街
それらしい服装を用意するため、私、ラグ、セリーンの3人は丘の麓にあるヴァロールという街に向かっていた。
アルさんは王子たちの護衛のため、先ほどの場所に待機してくれている。
ビアンカは結局お城の方を見つめたまま一向に動こうとはせず、一応声は掛けてきたけれどその声が届いているかどうかもわからなかった。
本当に一体どうしてしまったのだろう。
(お城の中に入れば、理由がわかるかな。でも、お城の中かぁ……)
不安を覚えながら急な下り坂を進んでいくと、眼下に大きな街が一望できた。オレンジ色の屋根と白壁の家々が建ち並ぶとても可愛らしい街。
セリーンは以前この街に立ち寄ったことがあるらしく、その時に街から見えたソレムニス宮殿がとても美しく印象に残っていたそう。
「まさかその城に入ることになるとはな」
私の後ろを歩くセリーンが背後に見える城を振り返り、感慨深げに呟いた。
そんなセリーンに一番前を歩くラグが釘を刺すように言う。
「あの金髪野郎のことで何か思い出したらすぐに言えよ」
「あぁ、わかっている」
その会話を聞いて思い出す。
王子のことが無くても、セリーンが訪れた国という理由から元々このクレドヴァロールには来るつもりだったのだ。