My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
王様の寝室の前には騎士が二人立っていた。しかしやはりクラヴィスさんの姿はない。
彼らはすぐにこちらに気付き、驚いた様子で背筋を伸ばした。
「殿下、こんな時間にどうされましたか」
「王の様子が気になってな。あれから変わりないか」
「はい!」
「よく眠っておられるご様子です」
緊張した面持ちで返事をする二人。
それを聞いてほっと胸を撫で下ろす。でも。
(なら、クラヴィスさんは……?)
王子は更に訊く。
「王妃もまだ中か?」
「はい!」
「そうか。……クラヴィスは見かけなかったか」
「副団長、ですか? いえ、見てはいませんが」
「殿下とご一緒だったのでは?」
「いや、どうやら行き違いになってしまったらしい。気にしないでくれ」
王子はそう何でもない風に言うと金の扉をノックした。
「ツェリウスです。入ります」
返事はなかったが王子はその重そうな扉を開けていく。
(クラヴィスさんのこと、気にならないわけないだろうけど……)
その背中を見ながら思う。
それでも、王様の呪いを解くことが先と考えたのだろう。
ならこちらもと、私は身を引き締めた。