My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
「王を治すためには貴女の力が必要です」
「え?」
王子の言葉をすぐには理解できなかったのか、王妃様が呆けたような声を出した。
「この者が教えますので、その通りにしてください」
「教える……何をですか?」
その瞳がこちらを見上げ、どきりとする。
やはり綺麗な人だ。そして、王子のお母さんとは正反対の美しさを持つ女性だと思った。
「あなたは、確かデュックスと花を持ってきてくださった」
私は慌てて頭を下げる。
「はい、私デイヴィス先生の助手をしています、華音といいます。よろしくお願いします」
「まぁ、デイヴィス先生の。わたくしに何を教えてくださるの?」
そのとき王子が首から笛を外し、王妃様に差し出した。
「この笛を」
――その手に、躊躇いは無い。
「貴女がこれを吹けば、王の病は治るとわかりました」
「ふえ?」
もしかしたら初めて見たのかもしれない。
王妃様はそれを不思議そうに見つめ、ゆっくりと手に取った。
王子は続ける。
「信じられないかもしれませんが、まずは一度軽く吹いてみてください」
「吹く、ですか?」
不安げに訊いた王妃様に、私は突起部を指さし言う。
「ここを口に含んで、ふーっと吹くだけです」
「ふーっと、ですか……」
そう小さく繰り返し、王妃様は戸惑いの表情を浮かべつつも突起部を口に含んだ。そして、
ピィィー
控えめな高い音が寝室に響く。