My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4

「私が城を離れている間のことはメガネから一通り聞いたが、あの笛とカノンの歌には似ている点があるそうだな」
「そうなの! それで、歌と一緒で曲を吹けばきっと王様も治るだろうってわかって。でもほんと、成功して良かった~」

 言いながら私は背もたれに寄りかかる。
 ソファはふかふかで、目を閉じたらすぐにでも夢の中に入れそうだ。
 私はそのままセリーンに顔を向ける。

「夜が明けたらお城中に王様の回復が伝わると思うから、きっと明日はお祝いムード一色だね」

 すると彼女はふと気づいたように口に手を当てた。

「どうしたの?」
「いや。王が回復したとなると、王位継承の件はどうなるのだろうと思ってな」
「あ」

 確かにそうだ。
 現国王がこのまま続けられるのなら、次期国王を急ぎ決める必要もない。必要なくなったのだ。

「……あの宰相さん、このこと知ったらどう思うんだろう」

 ――暗殺まで企てて。
 少しの沈黙の後。

「まぁ、私たちが考えたところでどうなるものでもないが」

 扉の方を見つめるセリーン。

「クラヴィスはどこに行ったのだろうな」
「うん。書庫の前で見張ってくれてるはずだったんだけど、戻ったときにはいなくて」
「……何もないといいがな」

 私は頷く。
 折角王様が治ったのだ。このまま何事もなく、笑顔で朝を迎えたい。
 そういえばあとどのくらいで夜明けだろう。そう思い閉められた厚いカーテンに視線を移し、

「あれ?」

白いものが目に留まった。

「どうした」
「ブゥが」

 指差し私はソファから立ち上がる。
 ブゥがカーテンの近くをうろうろと飛んでいた。

「外に出たいのかもな」
「うん。ちょっと窓開けようか。私も外の空気吸いたいし」

 ブゥにとって夜の散歩は食事でもある。
 それにずっと閉め切っていたせいか、部屋の中には熱が籠っていた。
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