My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
窓が割れたのだ。
そうわかりすぐに目を開けるとバタバタと厚いはずのカーテンが大きくたなびいていた。
そしてそれよりもすぐ近く、眼前にラグの横顔があって驚く。
私はしっかりとラグの片腕に収まっていた。
どくん、と再び心臓が大きく波打つ。
彼は小さく息を吐くと窓の方へ視線を向けた。
私もそちらに目をやって、窓の前に盛大に散らばったガラス片を見つけぞっとする。
あのままあの場にいたら私は……。
「あ、ありがとう、ラグ」
掠れた声でお礼を言うが、彼は外を睨んだまま私から手を離した。
「大丈夫だったか」
窓の反対側に逃げていたセリーンがこちらに走り寄ってくる。
セリーンも無事で良かった、そう言おうとしてその頬に一筋の赤い傷を見つけてしまった。
「セリーン、顔に傷が!」
「あぁ、こんなのは大したことない」
「でも」
そのときだ。
「ひっどいなぁ~」
聞こえた声にびくりと身体が強張る。
大きく靡くカーテンの向こうで、少年が笑っていた。
「人が話しているのに窓閉めちゃうなんてさぁ」
「ルルデュール」
セリーンが低く唸る。
でも彼は私のこともセリーンのことも見てはいなかった。
彼の視線の先は。
「ふっふー。また会えて嬉しいよ。ラグ・エヴァンス」
心底嬉しそうに、彼はもう一度笑った。