My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4


「……騒ぎになっていいのかよ」

 じゃり、と窓ガラスの破片を踏みながら部屋に入ってきたルルデュールにラグが低く声を掛ける。
 それに対し彼はとても楽しげに答える。

「ん? 別にいいんじゃない? ボクには関係ないし」

(関係ないって……)

 彼は暗殺者。
 暗殺者とは影でこっそり任務を遂行する者のことを言うのではないのか。
 今の音は確実に城中に響いたはず。きっとすぐにでも兵たちが飛んでくるだろう。

 しかし彼は無邪気とさえ思える余裕の笑みを湛え続ける。

「それよりさ、また遊ぼうよ、ラグ・エヴァンス」
「王子の暗殺ならもう必要なくなった」

 そう声を上げたのはセリーンだ。
 ちらりと、ルルデュールの視線が彼女に向けられる。

「つい今しがた王の病が治った。王位継承の件は見送られるはずだ。今事を起こすのは得策ではないのではないか?」

 セリーンの言葉に私もラグの後ろでうんうんと何度も頷く。
 だがつまらなそうにそれを聞いていたルルデュールは、はぁと息を吐いた。

「だからさぁ、そういう難しい話はもういいってば」

 なんだか、うんざりと言った顔だ。
 そしてその視線が再びラグに戻る。

「ボクはね、キミを追ってきたんだよ。ラグ・エヴァンス」

 ラグの眉がぴくりと動く。

「もう一度、今度こそ君と二人で遊びたくてさ。この間は邪魔が入っちゃったからね」

(……どういうこと?)
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