My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
王子暗殺の件とは関係なしに、本当にただラグを追ってきたというのだろうか。
だとしたら――。
丁度その時バタバタという複数の足音が聞こえてきた。
「殿下!!」
扉を開け放ち現れたのは長い槍を持った数人の衛兵たち。先ほどの音を聞きつけて来たのだろう。その中にやはりクラヴィスさんの姿はなかったけれど。
皆部屋の惨状を見て驚き、しかし守るべき人物の姿が見えないことにすぐに気付いたようだ。
「大丈夫だ。王子は今ここにはいない」
セリーンが戸惑う兵たちに凛とした声で言う。
「奴は魔導術士だ。お前たちは王子を探して護れ。ここには誰も近づけるな!」
それを聞いて一瞬怯んだ様子の兵たちだったが、ここで引くわけにはいかないと思ったのだろうか。
「し、しかし貴女方は」
「まーた邪魔が入った」
そのイラついた声にハっとしてルルデュールを振り返る。
彼のその鋭い眼光が衛兵たちを睨んでいた。
まずい、そう思ったときだ。
「わかった」
「!?」
私は耳を疑いラグを見上げる。
「遊んでやる」
ルルデュールの瞳が欲しかったおもちゃを手に入れた子供の様に輝く。
「本当に?」
「あぁ。だが、まさかここでやろうってんじゃねぇよな」
「うん! ここじゃいっぱい邪魔が入りそうだし、もっと広いとこで思い切り遊ぼうよ!」
嬉しそうに言って再びバルコニーへ駆けていくルルデュール。
それを追うように足を踏み出した彼の服を咄嗟に掴む。
こちらを見下ろしたラグの瞳は何の感情も映していない。