My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
「――だ、だめだよ。だって、」
ラグは一度しか術が使えないのに、その言葉を呑み込む。
ルルデュールは強い。
あの時はアルさんがいたから撃退出来たようなものだ。
二人きりでなんて、結果は目に見えている。
セリーンが後を続ける。
「それに罠かもしれないぞ。この間のように他に仲間がいる可能性もある」
「そうだよ!」
あの時倒れたルルデュールを連れて行った不気味な黒い影を思い出す。
アルさんの知り合いだと言っていたけれど、もしあの人もここに来ているとしたら。
「だとしても、行くしかねぇだろうが」
ラグはそう言って私の手を振り払った。
「アルがいればここは安全だ。あいつが戻ってきても絶対に来るなと伝えておけ」
そしてラグはこちらに背を向けルルデュールの待つバルコニーへと歩き出す。
それを見送りながら、
「――わ、私も行く!」
私はそう叫んでいた。
「カノン!?」
「……」
ぴたりと足を止め振り向いた彼に思いっきり睨まれる。
その視線を振り切るように私はラグを追い抜きバルコニーへと出た。
「なぁに? おねぇさん」
再び器用にバルコニーの手すりに立っていた彼が、機嫌良さそうに首を傾げる。
私は震える足と拳にぐっと力を入れ、口を開く。
「私も一緒に、行きます」