My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4

 彼が子供扱いされることを嫌がっていたことを思い出し、なるべく丁寧な言葉で。
 でも案の定、その楽しそうな顔が歪む。

「はぁ? 今の話聞いてなかったのおねぇさん。ボクはラグ・エヴァンスと二人きりで遊びたいんだよ」
「カノン!」

 すぐ横にセリーンが来てくれたのがわかったけれど、私はルルデュールから目を離さずに続ける。

「邪魔はしません。私、術士でもなんでもないので、何も出来ません。だから、お願いします!」

 そして頭を下げる。

 ――賭けだった。
 彼は私がセイレーン……歌を使う術士であることを知らない。
 パケム島で私は何もしなかった。

(だから、私が行けばラグを助けることが出来るかもしれない)

 ごくりと知らず喉が鳴る。
 ダメだと言われたらそれまでだ。
 ゆっくりと顔を上げると、ルルデュールは考え込むように口を尖らせていた。

「んー。……まぁ、いっかぁ」
「!」
「ボクがラグ・エヴァンスに勝つところ、ちゃーんと見ていてくれる人は欲しいし」
「じゃあ」
「うん。いいよ! そのかわりおねぇさん一人だけ。そっちのおねぇさんは絶対邪魔してきそうだからダメ」

 指差されたセリーンが低く呻く。

「でもおねぇさんも少しでも邪魔したら……わかってるよね?」

 にっこりと言われて背筋が冷えた。

「わ、かりました」
「じゃあ早速行こっか、ラグ・エヴァンス」

 私の後ろに視線を送るルルデュール。
 振り返ると同時、大きな舌打ち。
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