My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
「何勝手に話を進めていやがる。オレは連れていくなんて一言も」
「オレから離れるな」
ラグを強く睨み返す。
「そう言ったよね」
「……っ」
彼を一人で行かせたらダメだと。
さっき何の感情も映さないその瞳を見て思ったのだ。
だから、引く気は無かった。――そのときだ。
「もう、早くしてよね。――風を、此処に!」
そうルルデュールの声がしたかと思うと、いきなり凄まじい突風に襲われた。
「きゃ!?」
「カノン!」
全身に痛いくらいの風が当たる。目を開けていられない。
風の術に包まれたことは何度かあるけれど、全然違う。
(息が、出来ない。苦しい……!)
そんな中、身体がふわりと宙に浮くのがわかった。
「先に行ってるよ」
どうにか目を開けようとするとそんな声が間近で聞こえて驚く。
いつの間にかすぐ真横にルルデュールがいた。
その細長い手に、がしりと腕を掴まれる。
「ちゃんとついてきてよね、ラグ・エヴァンス」
直後更に風の勢いが強まり私はぎゅっと目を瞑る。
「……!!」
誰のものかわからない叫び声を遠く聞きながら、私はルルデュールと共に空へ跳んだ。