My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
どれほどの時間、どれほどの距離を飛んでいるのか全くわからなかった。
とにかくその間苦しくて、酷い風の音以外何も聞こえなくて、意識が遠のきかけた頃、急に風が止んだ。
同時にずっと掴まれていた腕が離れ、支えを無くした私はその場に無様に転がるしかなかった。
「っ、はぁ、はぁっ」
やっと、ちゃんと息が出来る。
私は横になった状態で必死に呼吸を整えていく。
満足に呼吸出来なかったためか、ずっと強い風に当たっていたせいか全身が麻痺したように動かない。
ぼやけた視界の中わかったのは、そこが土が剥き出しの地面だということ。
そしていつの間にか解けていた自分の髪が地面に広がっているのを見て、起きなければと思う。
「ふっふぅー」
その時聞こえた含み笑いに、私はゆっくりと顔を上げる。
ルルデュールが可笑しそうにこちらを見下ろしていた。
「おねぇさんホントに何も出来ないんだね。ただの人間って不便だね~」
「……」
私はなんとか起き上がろうと力を入れ、どうにか四つん這いの姿勢になった。
「おねぇさんてさ、ラグ・エヴァンスのなに? コイビト?」
「違い、ます」
「ふぅーん。まぁ、どーでもいいんだけどさ」
心からどうでもよさそうに言って、彼は夜空を見上げた。
周囲は黒々とした木々に覆われ、ここがどこかの森なのだとわかった。
城を囲むあの広大な森の中だろうか。だとしたら思ったよりも距離は飛ばなかったのかもしれない。
鼻歌でも歌い出しそうなルルデュールの顔を見上げ、私は思い切って訊ねる。
「……あなたは、なんでそんなにラグと戦いたいの?」