My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
24.笑顔
「ふっふー。や~っと遊べるね、ラグ・エヴァンス。ボクとっても嬉しいよ!」
再び対峙する二人を見て、パケム島での一戦を思い出す。
あの時も夜で、そしてこんな森の中だった。
違うのは、ここには今私たち3人しかいないこと。
アルさんもセリーンも、クラヴィスさんも、ブゥもここにはいない。
(ラグを助けられるのは、私しかいない)
ぎゅっと汗ばんだ手を握りしめる。
背の違いもあって、見た目はラグの方が確実に有利に見えるのに。
「で、どーすんだ」
ラグがルルデュールを睨み据え訊いた。
それに対しルルデュールはもう待ちきれないといった様子で大きく両手を広げた。
「魔導術の勝負だよ! どっちの魔導術の方が強いか。ボクはそれを確かめたいんだ」
「……くっだらねぇ」
しかしラグの吐き捨てるようなその台詞に、ルルデュールの顔がぴくりと引きつった。
それに気付いているのかいないのか、ラグは続ける。
「なら一発勝負でいいな。同時に」
「くだらない?」
ラグの言葉を遮るようにルルデュールは言った。
口元はまだ笑っているのに、その声音は先ほどまでとはまるで違う。
「……キミにとってはくだらないかもしれないけど、ボクにはと~っても重要なことなんだ」
ぞわりと鳥肌が立つ。
――まただ。
また、ルルデュールの顔から表情が消えていた。