My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
その手がゆっくりと上がっていき、ラグを真っ直ぐに指差す。
身構えるラグ。
「ラグ・エヴァンス。本当なら、ボクがキミになるはずだったんだ」
「……?」
先ほども聞いたその言葉。
ラグも眉を寄せ意味を解りかねている様子だ。
と、彼を指差していた手がだらんと下ろされる。
「――そう。本当なら」
その時、ルルデュールの目がカっと見開かれた。
そして鬼のような形相で彼は叫ぶ。
「このボクが! “悪魔の仔”になるはずだったんだ!!」
その声に同調するかのように彼の周りに突風が巻き起こる。
(あのときと同じだ!)
咄嗟に手足に力を入れる。
ざぁっという木々の悲鳴と共に強風が通り抜けていく。
座り込んでいなかったら倒れていたかもしれない。
――ラグは!?
焦り顔を上げると彼は先ほどと同じ場所に平然と立っていた。
ほっと息を吐くも、ルルデュールの怒声は更に続いた。
「ストレッタが生み出した悪魔の仔ラグ・エヴァンス! お前のせいで戦争が終わったんだ! お前がいたからボクが活躍できなかったんだ! お前がいなければ、ボクが悪魔の仔になっていたはずだったのに!!」
そこまで一気に捲し立て、再びルルデュールはにこりと可愛らしく嗤った。
「――だから、どっちが本当の“悪魔の仔”か、ここで決着をつけようよ」