My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4


  ねむれ ねむれ おやすみなさい
  涙のわけは忘れて おやすみなさい
  明日になればきっと 笑顔の自分に会えるから


 今日あった嫌なことは全て忘れて、今は眠ってしまおう――そういう歌だった。
 嫌なことがあった日、眠る前にいつも口ずさんでいた歌。
 そうすると、朝目が覚めた時、少し元気になっている気がした。

 髪が銀に輝き始める。
 そこで初めて、ルルデュールの顏に驚きと焦りの色が浮かんだ。

「銀の……まさかっ」

 その小さな体がぐらりと傾く。


  ねむれ ねむれ おやすみなさい
  痛みのわけは忘れて おやすみなさい
  明日になればきっと 新しい自分に会えるから


 いつもは自分を励ますための歌だけれど。
 でも今はルルデュールに向けて。

 ラグのことを忘れて欲しかった。
 そして今は深く、眠って欲しかったから。


「――くっ、やめ、ろ!」

 足をふらつかせながら、ルルデュールは歌に抗うように両手で顏を押さえる。
 しっかりと効いているのだとわかり、私は繰り返し歌い続ける。しかし。

「銀の、セイレーン……!」

 ぎくりとする。
 細い指の間から、爬虫類を思わせる二つの瞳がこちらを憎々しげに睨んでいた。
 それを見た瞬間歌声が震えそうになり、いけないと気持ちを奮い立たせる。

 お願い、眠って……!

 一際強く思いを込めて歌う。
< 234 / 330 >

この作品をシェア

pagetop