My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
するととうとう立っていられなくなったのか、ルルデュールはがくりと膝を着きそのまま地面に倒れこんでしまった。
目を閉じ動かなくなった少年を見つめながら、私は徐々に歌声を小さくしていく。
すぐにでも起き上がってきそうで、なかなか止められなかった。……先ほどこちらを睨んでいた目がしっかりと脳裏に焼き付いている。
恐る恐る口を閉じ、少しの間その横になった体を見ていたが起きる様子は無い。
そこで漸く私はほっと息を吐き、ヘナヘナとその場に座り込んだ。……腰が抜けてしまったかもしれない。
と、こちらに近づいてくる足音に気付きぎくりとする。
そーっと顔を上げると案の定、ラグが今にも怒鳴りそうな顏でこちらを見下ろしていた。
「だ、だって、これしか思いつかなくて」
怒られる前に弁解する。
「ラグのこと忘れればもう追ってくることもないだろうし……ちゃんと効いてるかわかんないけど」
「今度は、お前が狙われるかもしれねーんだぞ」
「そ、それは……」
またあの目を思い出し言葉に詰まる。
すると、ふぅと息を吐きラグが目の前にしゃがみ込んだ。
目線が同じ高さになって思わず肩を竦める。
「ありがとな」
「……へ?」
瞬間、その言葉の意味がわからなかった。
いや、彼の口から出たその言葉の意味がすぐには理解出来なかった。
(今、ありがとうって……言った?)