My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
私が何度も目を瞬いていると、大きな手が伸びてきて頭にぽんと乗った。
「今度ばかりは、助かった」
そうして、彼はふっと唇の端を上げた。
笑ったのだ。
彼が。
あのラグが。
呆れたような笑い方だったけれど、確かに。
――途端、ぶわっとよくわからない感情が溢れ出た。
「なっ!? なんで泣くんだ!?」
「え……」
言われて気が付く。
溢れていたのは、涙だった。
慌てたように私の全身を見回すラグ。
「まさか、さっきあいつに……どこか痛むのか!?」
「ちが、ふっ、……わかんないけど、ラグが……っ、」
ぼろぼろと零れ落ちてくる涙。
なんで急にこんなに涙が出てきたのかわからない。
安堵の涙だったのか、それともラグの笑顔があまりに衝撃的だったからなのか……。
とにかく一度流れ出てしまった涙は拭っても拭ってもなかなか止まりそうになくて。
そのとき、ふわっと人の温もりを感じた。
(――え?)
涙を拭っていた手が止まる。
ぼやけた視界に彼の首元が映っている。ぽんぽんと宥めるように優しく頭を叩かれて。
そこで漸く状況を理解した。
――私は今、ラグの腕の中にいる。