My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4


 そうとわかった瞬間、全身が沸騰したように熱くなった。

 ついさっきもその腕の中に引き寄せられたけれど、違う。
 ただ優しく、私を落ち着かせるように触れるその大きな掌に、そしてありえないほどに早鐘を打つ自分の胸に、酷く困惑する。

 その音はきっと彼にも伝わってしまっているだろうと気づいて、どうしようもなく恥ずかしくなった。

「――も、もだっ」
「? もだ?」

 耳元で繰り返されたその声が余りに近くて、もう、限界だった。

「も、もう大丈夫、だから!」

 なんとかそれだけはっきりと言う。
 本当に、涙はもうすっかり止まっていた。

 首の後ろに回されていた手がゆっくりと離れていき、温もりが消える。

 ……今がまだ夜明け前で良かった。顏の熱が下がるまでにはもう少し時間がかかりそうだ。

 彼が立ち上がるのがわかってほっとした、そのときだった。

「てっめぇ、何を笑っていやがる!!」

 いきなりの怒声にびっくりして顔を上げる。
 ルルデュールが起きたのかと思ったのだ。
 しかし、ラグの視線の先には全く予想外の人物が立って……いや、浮いていた。

「いやぁ、邪魔をしたら悪いかと思ってね」
「エルネストさん!」

 物凄く久しぶりな気がする彼が、こちらを見て楽しげに微笑んでいた。
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