My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
そして、そのエメラルドグリーンの瞳が微かに憂いを帯びる。
「彼女が現れたことで、この世界は変わってしまったんだ」
(彼女……?)
それはドナのおばあちゃんが会ったという銀のセイレーンだろうか。それとも……。
彼が目を細め、私を見た。
「君も随分、セイレーンらしくなってきたね」
「え?」
「人の心を動かせるのは、術士の中でもセイレーンだけだ」
その言葉と真剣な眼差しにどきりと緊張が走る。
「でも一歩間違えば、人を壊すことも出来てしまう」
私は目を見開く。
――人を壊す……?
動揺する私に彼はにっこりと笑った。
「君なら大丈夫。彼もいることだしね」
その瞳がラグに移る。
「君も、色々とその呪いのことを調べているようだけれど、見つかったかい?」
「うるせぇ!」
憤慨するラグを面白がるようにクスクスと笑うエルネストさん。
「こんなところに立ち止まっているよりも、早く僕の元においで。見つけてくれるのを待っているよ」
そう言い残し、彼はいつものように音もなく消えてしまった。
……言われた言葉が胸につかえて、なんだか気持ち悪い。
「あいつの目的は、なんなんだろうな」
「え?」
エルネストさんが今までいた場所を睨みながら、ラグが唸るように言った。
「お前には助けて欲しい、そう言ったんだよな」
「うん」
僕の本体を助けて欲しい。確かに彼はそう言っていた。
「そもそもあいつはなんで幽閉なんてされてんだ」
「さ、さぁ」
自分のことに必死で、エルネストさんの目的なんて考えたことがなかった。
いつまでたっても彼の謎は解けないままだ。きっと彼の元へたどり着くまで、その答えが明らかになることはないのだろう。