My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
「……やっぱり、私待ってた方がいいかな。セリーンとそこの街で」
「ダメだ」
「え?」
すぐに返ってきた声に顔を上げると、ラグが立ち止まり再びこちらを睨み見ていた。先ほどよりも酷く不機嫌そうな顔。
「オレから離れるな。そう言ったはずだ。……さっさと服を手に入れて戻るぞ」
そして彼は再び前を向き、足早に歩き始めた。
「なんだアレは」
「!?」
いつの間にか真横にセリーンがいて驚く。
彼女はラグの背中を見つめながらふっと笑った。
「オレから離れるな、か。あの子に言われてみたいものだ」
「ち、違うよ? そういう意味じゃなくって、そのまんまの意味だよ!?」
「どういう意味だ?」
セリーンに可笑しそうに問われ、自分でも何を言っているのだろうと思った。
顔が赤くなっていることを自覚して、妙な焦りを覚える。
前に言われたときもそうだったけれど、いきなりああいうことを言われるとびっくりしてしまう。いつも無愛想で、そういうことを絶対に口にしなさそうな彼だからこそ。
(だから、彼にとっては本当に単に離れるなっていう、そのままの意味なんだろうけど……)
「いいのか?」
「え?」
セリーンを見上げる。
「あの男についていくのか?」
遠のいていく背中を見ながら考える。
――もしここで、やっぱりどうしてもお城には行きたくないと言ったら、彼はどうするのだろう。