My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
「お前は、本当に他人のことばっかだな」
「そんなこと」
「セリーンの奴だ」
反論しかけたところで顎で前方を指され、私は身を乗り出し彼の視線を追った。
大分近付いてきたお城のバルコニーのひとつに特徴的な赤色。
「セリーン!!」
大声でその名を呼ぶと届いたのか彼女が大きく手を振ってくれた。
彼女一人だけのようだ。ということは、アルさんたちはまだクラヴィスさんを捜しているのだろうか。
「あ」
そのときラグが小さく声を上げた。
「え?」
見上げるとものすごく嫌そうに顔を引きつらせていて、私も「あ」と同じように声を上げていた。
「……塔に降りるか」
「え!?」
「オレが最後にあの部屋を出たままなら、窓が開いているはずだ」
言うなりラグは急きょ城で一番高い塔へと進路を変更した。
「~~~!!」
何かセリーンが叫んでいるのが聞こえた気がしたけれど、ラグは一切そちらを見ようとはしなかった。