My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
幸い、ラグの言う通り塔のてっぺんにある窓は開いたままになっていた。
私は先に暗く狭いその部屋の中に降ろされ、その後にラグが窓枠に足を掛け中へと入ってきた。
その身にまだ纏った風に、散乱するように置かれていた何冊もの書物のページが一斉にばさばさと捲られていく。
ラグが昼間この部屋で一人己に掛けられた呪いについて調べていたことを思い出した。
風が治まり、その途端彼の身体が小さくなっていく。
ふぅと息を吐いた彼に私は声を掛けた。
「なんか、ちょっと久しぶりな気がするね」
「うるせぇ」
不機嫌そうに視線を逸らした少年の姿のラグに、つい笑みがこぼれる。
――内心、とてもほっとしていた。
正直、今は元の姿の彼よりもこの小さな彼の方が話しやすい。
でもすぐに笑っている場合ではないと顔を引き締める。
「これからどうしよっか。アルさんにも合流したいし、クラヴィスさんのことも気になるし……セリーンは、すぐにこっちに来そうだけど」
最後は付け加えるように小さく言うとラグははぁと重い溜息を吐いた。
「オレは城の奴らにこの姿を見られたらまずいからな。戻るまではここにいる」
「あ、そうだよね。じゃあ私は」
「お前もその間ここにいろ」
じろりと睨まれる。姿は小さくてもその青い瞳は同じで、どきりと胸が鳴る。
「う、うん」
頷くとラグは満足したのか、私を追い越し扉の前に立った。
「これか」
そんな呟きのあとに、ガチャンという音。
「え?」
「これであいつは入って来られない」
腰に手を当て、勝ち誇ったように言う小さなラグ。
セリーンのことだとすぐにわかり、私はこっそり苦笑した。