My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
床に散乱した本を見回しラグは短く息を吐いた。
そしてそれを手に取り本棚に戻し始めたのを見て、あれと思う。
「もう、呪いのこと調べなくていいの?」
「金髪野郎がこんなところに立ち止まっているよりって言ってたろ。あいつがああ言うってことは、ここには何も無いってことだ」
「そっか……」
「どっちにしろ、もうここにはいられねぇだろうし」
「え?」
「あのガキ、オレの名前を連呼してやがったからな」
(あ……)
そうだ。あの場には数人の衛兵たちがいた。
そんな中ルルデュールはラグをフルネームで何度も――。
「でも、ラグは何もしてないんだし」
「そういう問題じゃねーって、お前ももうわかってるだ、ろっ」
自分の背よりも高い棚に本を仕舞いながら何でもないふうにラグは言う。
私は口を噤むしかなかった。
「お前の歌も、どこまで効いているかわからねーしな」
ぎくりとする。あの歌が効いていなかったら、またここに来る可能性があるのだ。
「そう、だね」
頷いて、私も手伝おうとしゃがみ込み足元にあった本を手に取った。
なんとなくパラパラとページを捲ってみるが、やはり読めない文字ばかりだ。でも。
「あ」
その中に数ページに渡る楽譜を見つけ、思わず声が出ていた。
そうだ。王子はあの呪いに関する書物の他にも楽譜を見かけたことがあると言っていた。