My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
(って、違う! ラグがどうとかじゃなくって、私がどうするかだよ)
まだ少し火照った頬を軽く叩いて真面目に考え直す。
「私はどちらでも構わないが、カノンも王子の言葉が気になっているのだろう?」
「うん」
「なら、街で待っていても落ち着かないんじゃないか?」
「…………」
確かに街でただ待っていても結局城内のことが気になってソワソワしっぱなしになりそうだ。
(ビアンカのことも気になるし)
不安は拭えないけれど、私は覚悟を決めることにした。
「そうだよね。うん、私もラグたちと一緒に行く。気になることいっぱいあるし」
「そうか」
セリーンが微笑んでくれて、そんな彼女を見てふと思い出す。
「セリーンはいいの? なんかさっきアルさん、セリーンを奥さんにとか言ってたような気がするけど」
「そういえばそんな戯言を聞いたような気がしたな。戻ったらもう一度確かめてみることにしよう」
顔と口調は穏やかなのに、目が一切笑っていなくて、私は余計なことを言ってしまったと心の中でアルさんに謝罪した。と、
「なに立ち止まってんだ、さっさと行くって言ってんだろ!」
前方から怒声が飛んできて、私は焦って走り出した。
――ツェリウス王子はこの国の王子様だけれど、友達の大切な人でもある。
彼女が彼を信じたように、私も彼を信じてみよう。
先ほどまだ遠く見えていたオレンジ色の屋根が、大分近付いていた。