My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
「――ひょっとして、クラヴィスが弟派だって噂流したのもアンタだったり?」
「!」
アルさんの推測に驚く。
だとしたら、かなり以前から今この時のことを計画していたことになる。
フィグラリースさんは答えない。
「……プラーヌスに命令されたのか?」
かろうじて聞こえてきた王子の低い声。
そうだ。彼はプラーヌスのお気に入りなのだと、王子は話していた。
(やっぱり全部あの宰相が?)
と、そこで初めてフィグラリースさんが感情を露わにした。
「貴方が!! ……貴方が、帰ってさえ来なければ」
聞こえてきたそれは、とても苦しげで。
しかし、そこまでだった。
フィグラリースさんは剣を構え直し、再び冷たく言う。
「これもデュックス殿下のため。悪く思わないでください」
そして彼は、王子の前に立つアルさんに向け己の剣を振りかざした。
ガキィーーン!
そんなけたたましい金属音が塔内に響き渡る。
「なっ!?」
フィグラリースさんの顔が驚愕に引きつる。
アルさんが彼の剣を腕で受け止めたのだ。
(腕に、何か着けてるんだ!)