My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
続けて「あ」 と声を上げたアルさんは王子を振り返った。
「気絶させたらまずかったですかね」
王子は一瞬で決まった勝負を目の前にしてまだ呆気に取られていたようだったが、我に返り階段から下りた。
「い、いや、構わない。起きたらじっくりと訊けばいい。それより早く」
「ですね。クラヴィスを早く見つけましょう。――っと、ちょいと失礼しますよ~」
アルさんはフィグラリースさんの前にしゃがみ込んで何やらごそごそとし始めた。
(? 何してるんだろ)
「あったあった!」
ひょいと立ち上がったアルさんは手にしたリング状のものを王子に掲げて見せた。
「鍵? ――そうか!」
王子の声。
(鍵?)
ここからではよく見えないがどうやら鍵の束のよう。
「多分、これのどれかが役立つかなと」
王子が満足げに頷くのを見て漸く理解する。
「そっか、クラヴィスさんどこかに閉じ込められているかもしれないんだ」
「その可能性は十分にあるな」
セリーンも頷く。
と、アルさんがこちらを振り仰いだ。
「おーい、こいつら任せていいか?」
「あぁ。早く行ってこい」
答えたのはセリーン。
アルさんはそんな彼女に嬉しそうに手を振ると、
「頼んだぜー!」
そう叫んで王子とブゥと共に今度こそ書庫塔を出ていった。
倒れているフィグラリースさんを見れば何かでしっかりと後ろ手に縛られていて、私は感嘆の溜息と同時に肩の力を抜いた。