My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
27.ユビルスの術士
「クラヴィスさん、無事だよね」
「その男の言い方からすると、おそらくまだ殺されてはいないだろうと思うが……」
セリーンが眉間に深く皴を刻み答えてくれた。
――クラヴィスもすぐに貴方の元へ参ります。
彼はそう言っていた。
だからきっと、生きているはず。
「うっ」
小さな呻き声に皆の視線がフィグラリースさんに集中する。
瞼がうっすらと開いていき、
「っ!」
その瞳が、前に立つラグや私たちを捉えた。
彼はすぐに自分の置かれた状況を察したようだった。
「気が付いたか?」
そう彼に声を掛けたのはセリーン。
「残念だったな。私たちは護衛も兼ねてツェリウス殿下に呼ばれたんだ」
「……なぜ生かしておくのですか」
「!」
フィグラリースさんのそんな第一声に息を呑む。
「早く、殺してください」
「それを決めるのはオレたちじゃない」
先ほどと同じようにラグが冷たく告げる。
「それにお前にはまだ訊きたいことが」
「クラヴィスさんは生きているんですよね!?」
思わず彼の言葉を遮って訊いていた。
するとフィグラリースさんは目を閉じ、ゆっくりと頷いた。
それを見て心底安堵する。