My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4

(良かったぁ……)

「宰相に言われたのか?」

 セリーンがズバリ訊くと、フィグラリースさんは目を閉じたまま首を横に振った。

「違います。全て私が計画したこと。プラーヌス様は関係ありません」

 その答えにセリーンはふぅと短いため息を吐いた。

 ――なぜ本当のことを言わないのだろう。
 なんで庇ったりするのだろう。あの宰相に命令されたからだと言えばいいのだ。
 そうすればもしかしたら許してもらえるかもしれないのに。
 そうすれば、デュックス王子にも知られずに――。

 そこまで考えて、気が付いた。

「デュックス王子に知られないため、ですか?」

 私の問いかけに彼は目を開いた。

「宰相が……彼のおじいさんがお兄さんの命を狙っているってこと、知られたくないからですか?」
「……」

 彼は床を見つめたまま答えない。
 ぎゅっと両手を強く握り締める。

「さっき、あなたはデュックス王子のためだと言いましたよね」

 昼間嬉しそうにツェリウス王子と話していた少年の顔が浮かんで、なんだか無性に腹が立ってきて、私は声を荒げた。

「何が王子のためなんですか。宰相にしたってあなたにしたって、こんなに身近な人がお兄さんを殺そうとしたと知って、デュックス王子が喜ぶはずないのに!」
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