My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
残響が消えると同時、ふぅとアルさんの吐息が聞こえた。
「デュックス殿下な、お前さんを捜していたんだと。さっきの音で目が覚めて、近くにお前さんがいないのに気が付いてな」
「……」
フィグラリースさんは固く目を瞑り、やはり何も言わない。
そんな彼に痺れを切らしたのか、デュックス王子が再び強く叫んだ。
「もういい! じいさまのところに行ってくる!!」
「デュックス王子!」
くるりと踵を返し廊下へ駆け出した王子。
それを追おうとした私の腕を、ラグの手が掴んで止めた。
「でも!」
彼は何も言わず、私から王子たちの方へと視線を向ける。
「いいんですか?」
アルさんがツェリウス王子に訊ねていた。
「すみません! 私があんなこと」
私はその場で頭を下げる。
――あいつは何も知らなくていい。
王子は、そう言っていたのに。
ラグの手が私から離れる。
「いや。……いずれ解ることだ。僕たちも行こう。フィグラリース、お前もだ。クラヴィス頼んだぞ」
「はっ」
クラヴィスさんがすぐにこちらに駆けてきて、横になっているフィグラリースさんの身体を起こしていく。
その素早い動きを見て、改めて彼が無事だったことにほっとする。