My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
「……まさか、おまえに殺されそうになるなんてな」
フィグラリースさんを連れて歩き出しながらクラヴィスさんが小さく呟くのが聞こえた。
「完全に油断したよ」
いつもとは違うそのラフな話し方に、二人が親しい間柄であったことが伺えたけれど。
「…………」
フィグラリースさんは何も言わず、ただ深く頭を垂れていた。
クラヴィスさんがこちらを振り返る。
「皆さんも出てください。この者らを一先ずここに閉じ込めてしまうので」
「はい! ――あ、でも」
足を踏み出そうとして後ろを振り返る。
(ラグ、大丈夫かな……)
彼は自分の名がバレたことを気にしていた。
私の視線に気が付くと、彼は息を吐きながら目を伏せた。
「オレはここで」
「貴様が城内を歩いていてもさほど問題はないと思うぞ」
セリーンのその言葉にラグは眉を寄せる。
「先ほどの件は王子がうまく誤魔化していたようだからな」
どういうことだろう。
「早く出よう」
「う、うん」
背後を気にしつつ私はセリーンについて行く。
するとラグも遅れて歩き出し、ほっとした。