My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4


 あのときは暗闇の中でその容姿はわからなかったけれど、蝋燭の灯りに照らされた顏はほっそりと女性的で、アルさんの同期と聞いていたが大分年若く見えた。
 しかし目を隠すほどに長い前髪のせいで、その視線や表情はやはりわかりにくいままだ。

 その唇の端が僅かに上がった。

「私は連れ戻しにきただけですよ。勝手に行動した生徒をね」

 ぎくりとする。
 彼は、私が先ほど眠らせたルルデュールを捜しているのだ。

 ふぅと嘆息が聞こえた。

「プラーヌス。その者はユビルスの術士だな」

 王子に言われプラーヌスの顔がさっと蒼ざめる。
 そうだ。彼がこの場にいることが、宰相とユビルスの術士が繋がっていたという何よりの証拠。

「僕は旅の途中、その者と仲間に襲われ殺されかけた。ここにいる者たち皆がそれを目にしている」

 それを聞いたデュックス王子は瞳を大きくしプラーヌスの背後に立つ暗殺者を見上げた。

「それについ先ほども、そこにいるフィグラリースにな」

 フィグラリースさんの背がびくりと震える。
 厳しい口調で続ける王子。

「観念するんだな、プラーヌス。言い逃れは出来ないぞ」

 途端、がくりと膝をつきプラーヌスは頭を垂れた。
 ――己と血のつながった孫を王にしたいがために、暗殺者を雇った男。

 その小さな肩が震え出し、泣いているのだと思った。しかし。

「ふ、ふふふ……っ」

 彼は笑っていた。
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